雨が降り続いているせいか、空気がじっとりと重い。
濡れ縁で雨の音を聞くともなしに聞いていると、時折意識がふわり、と飛びそうになる。
膝の上の温もりが、余計にまどろみを呼ぶようにも思える。
その膝の上の温もりが、少し身じろぐ。

「どうしたんだい?」
こちらを伺うような気配に気付き、少し視線を下ろす。
むくりと起き上がった方へ手を近づければ、小さな指がそっと指先を握る。
「雨、やまないね」
「そうだね」
「眠たくなってきちゃった」
もうすでに眠気が勝っているのか、舌足らずな喋り方になっているのを聞いていると、頬が緩む。握られた指先を外して、肩に手を回す。
「眠っていいよ、隣の部屋には布団も敷いてある」
「うん」
けれど、肩に置いた手はそのままに、ぴたりと体の横に温もりが寄り添う。
「どうしたんだい」
肩をゆっくりと撫でる。こつりと頭が胸の辺りに軽く触れた。
「雨降ると」
「ん」
「お出かけできないから、嫌だけど」
「うん」
ぎゅっと、細い腕が体を抱きしめてくる。
「東仙隊長と、こうしておうちにいられるから、好き」
へへ、と小さく笑って、腕の力が緩む。こちらを見ているのであろう視線を感じて、顔を覗き込むようにすれば、照れたのか胸に顔を埋めてしまった。
きっと今の自分の口元には、大きく笑みが広がっているだろう。
細い体を抱き上げて、向かい合うように膝の上に座らせる。寄りかかってくる小さな体を抱え込むように腕を回した。
「だから、眠っちゃうのは、もったいないの」
少し顔を動かして、息継ぎをするように上を向く。
「けれど、眠たそうだよ」
笑いを含んで耳元に囁けば、不満げなため息が漏れる。
「それじゃあ、一緒に昼寝をしようか」
腕を肩に回させてから、立ち上がる。
「腕枕でも、手を繋ぐでも、なんでも。の傍にいるから。もちろん、目が覚めたときも一緒にいるよ」
首元にほぅ、と吐息がぶつかる。
「うん。それなら、いい」
安心したのか、首に絡んでいた手から、力が抜けていくのが分かった。

「て、つないで」
並んで横になり、軽く髪を梳いてやると、その手をとられ指先を軽く握られる。はその手を自分の顔に近づけて、へへ、と笑いを漏らす。
「いっしょ」
「うん」
「おやすみなさい」
「おやすみ」
小さな寝息が聞こえるまで、手を握らせたままにしていた。寝息と共に、指先を握る力が抜けていくのが分かる。ただ重なっているだけの手からするりと指先を抜き取り、起こさぬように両腕を回して小さな体を抱き寄せた。
「おやすみ」
腕の中でが小さく動いて、胸に顔を埋める。
ほんわりと温かい吐息を感じながら、ゆっくりと意識を手放す。




こうしていれば、きっと夢の中でも一緒にいられるから。