毎日毎日、律儀に学校に通って、授業受けて、ふらふらと帰る。 惰性なのかまじめなのか、とにかく私の毎日は判を押したようにおんなじで、代わり映えなんてなくて、だからといって声高につまらないと叫ぶ気もなくて。 だからか口癖が、 「なんかいいことないかなぁ」 になっている、と気付いたのは最近のこと。 口にするよりも前に、 「そんなにいいことなんてないわよ」 って彩子に言われるくらい、私は言っているらしい。 「だってさぁ」 「だってもなにも、あんた、部活とか入ればいいじゃない」 「え、めんどくさい」 「あたしはうちの部活手伝ってくれたら嬉しいけどね」 「バスケ部は不良の溜まり場だから嫌だ」 (ち) 思い切り舌打ちされたけど、聞こえないふり。 だって、今年のバスケ部は、1年に赤い頭の男の子はいるし、まぁ2年は宮城くんは彩子と良い仲だから(言うと怒られるけど)私も一応知り合いで怖いとか思わないけど、3年の、えーと誰だっけ、後から入ってきた人も合わせて不良だと思うので、私はとりあえず関わりたくない、と思っているわけだ。 「あ、けど、久しぶりに流川くんとはお話したいなぁ」 「あんた、中学んときよく話してたじゃない」 「あーまぁ。けど、中学ん時の話だからねぇ」 「流川もいるし、マネージャー手伝ってよ」 「流川くんじゃつられないよ」 私はぼんやりと窓の外を眺めた。 今日は雨が降っていて、しかもけっこう大降りで、帰るのも面倒くさいと思ってしまう。 帰ったところで、だらだらとテレビを見たりネットをしたりするだけなのだ。 代わり映えしない毎日。 明日なにかあればいいな、って毎日明日明日って翌日のことばっかり考えてる。 翌日になったところで、何も変わりはしないんだけど。 「あ、そういえばさ、私、今日の運勢、すごい良いらしいよ」 「へぇ」 彩子はもう私のことは放っておくことにしたようで、パラパラと雑誌を眺めている。 彩子は派手目の美人だから、そういう服よりも、隣のページの方が似合うと思うな、横から覗きながらそんなことを思う。どっちかと言うと、今、彩子が見てるページの服の方が私に似合う。つまりはタイプが違う。 「ラッキーカラーは赤なんだって」 「へぇ」 むむ。 ちっとも聞いてくれない。 「いつもと違う道を通ると良い出会いがあるんだってー」 「へぇ。けど、どうせまっすぐ帰るんでしょ。おんなじ道じゃない」 「・・・電車、乗る位置変えるとか」 「道は同じじゃない」 「・・・うぅ」 「そもそも、あんた、出会ったって声かけられないくせに」 「・・・仰せご尤も」 ほんと良いことないかなぁ、机に突っ伏した私の呟きをかき消すかのごとく、 「アヤちゃ〜ん!!」 無駄に大きな宮城くんの声が響いた。 「あ、旦那のお迎え」 言ったらハリセンで殴られた。 「あ、」 しまりのない顔をした宮城くんを横に従えた彩子が、私に雑誌を渡しながら 「うちのバスケ部、ユニフォーム赤」 そう言って、にっと笑った。 「良い出会いがあるかもよ? 雨が止むまででも、見に来たら?」 仲良く並んで出て行く二人を見送ってから、私は窓の外を眺めた。 雨はとうぶん止みそうもない。 いつもと違う道を通れば、何か良いことあるのなら、体育館を通って帰るのだって良いはずだ。 久しぶりに流川くんと話が出来れば、おお、それだけでも良いことかもしれない。 私はいそいそとカバンに雑誌をしまって、彩子のあとを追いかけた。 ************************** 「さんって、こないだ三井さんと一緒にいるときに会った子だよね?」 「そうよ」 「三井さんが気に入ってた」 「そう」 「アヤちゃん、もしや・・・」 「まぁ、は流川が気になってるみたいだけど」 「・・・(頑張れ三井さん)」 |