夏が終わるのは、いつだろう。
二学期が始まったら、もう秋、って気分になるのだろうか。
朝の真っ青な空を見上げて、そんなことをぼんやり思った。
みんなの夏も、私の夏も、大会が終わると同時に終わってしまった気がする。
まだまだ暑くて、日差しもきつくて、日にも焼けるし、体育館はむしむしする。洗濯物はからりと乾くし、部活中の暑さ対策はきっちりやらないといけない。
けれど、やっぱり大会が終わって、目指していた「夏」は終わった、そう思う。

「どうした、ぼんやりして」

振り返れば、タオルを片手に牧が立っていた。
「なんか、終わるなぁ、と思って」
隣に並んだ牧が、さっきまで私がしていたように空を見上げて、少し顔を顰めた。
「まだ終わらないだろ」
一緒に見上げれば、夏の太陽がぎらぎらしていて、私は手で庇を作った。
眩しくて、目を細める。
「俺たちにはまだ冬があるし、あいつらには来年もあるし、な」
隣の牧を見て、その視線の先を追う。
何人かの部員が空を見上げたり、日差しを避けて日陰を探したりしながら、こちらに歩いてくる。
私たちに気付いた信長が、にかっと笑いながら大きく手を振った。
私も笑って手を振り返す。
「そろそろ始めるぞ」
牧の声に、慌ててみんなが走り始める。
私はもう一度空を見上げて、牧を振り返った。
「ドリンク、準備してくる」
おう、とだけ答えて体育館へと向かった牧が、立ち止まった。
「もうしばらく一緒に頑張ろうな」
こちらを向いてそれだけ言ってまた背中を向けてしまった牧に、「りょーかい!」大きく返事をして、私は部室へ向かった。
じりじりと私を焦がす日差しは、まだまだ夏。