「なにやってんだ」


急に後ろから声がして、びっくりして顔を上げたら机に思い切り頭をぶつけた。
痛すぎる。
すごい音もした。
あんまり痛くて半泣きになりながら振り返ったら、呆れた顔をした三井が立っていた。
「すげぇ音だったな」
「こぶできた」
「おーおー、そりゃ可哀想に」
机の下から這い出てきた私の頭を、しゃがみこんだ三井がぽんぽんと叩く。
だから、こぶがね、出来てるって言ったじゃないですか。
叩かれたら、痛いの。
なんだか悲しくなってきて、ぼろんと涙が零れた。
「探し物も見つからないし、頭はぶつけるし、もう、最悪ー」
ごしごしと顔をこすりながら、不貞腐れたように言えば、涙に一瞬驚いた顔をした三井も、
「ばっかだなぁ、お前」
板についたヤンキー座りの状態で、がしがしと私の頭を撫でた。
だから、こぶがね、あるって言ってるじゃないですか。
うわあああん、とわざと大きな声で泣きまねして、ぱしんと手を払いのけたら、いて、と小さな声がした。
「人が慰めてやってんのに」
「こぶあるっていってんのに」
「え、マジで?」
冗談かと思った、と言った三井の両手が私の頭に伸びて、ちょうど私が机にぶつけたあたりをそっと指先で撫でた。
思ったよりも冷たい指先がジンジンする頭に気持ちよくて、下を向いて口元を緩ませた。
「できてねぇじゃんかよ、びびらせんなよ」
「これから腫れるんだもん」
「はいはい」
「ほんとに痛いんだから」
「そりゃ可哀想に」
少しむくれて見上げれば、予想以上に近い位置で三井は座っていて、いつものように笑っている。

見慣れた笑顔のはずなのに、どきん、と胸が鳴った。